公開日:2026年10月6日|暮らしの相談所
被害届について「相談すれば必ず受理される」「海外サイトなら受理されない」と一律に言うことはできません。事実関係、管轄、被害の具体性、提出資料などを踏まえて個別に扱われます。相談記録と被害届は同じものではないため、目的を分けて準備しましょう。
結論:受理可否は個別事情で決まり、相談と提出準備は分けて考える
被害届は、被害を受けた事実を警察へ申告するための書面です。ただし、暗号資産を送ったという一点だけで、どの犯罪のどの被害として扱われるかが自動的に決まるわけではありません。勧誘内容、虚偽表示、相手の行為、送金先、出金拒否の経緯、所在地や管轄などを確認したうえで個別に判断されます。
まず相談し、資料の不足や担当窓口を確認した後に提出へ進むこともあります。相談した事実の記録と被害届は役割が異なります。「相談番号があるから被害届も受理済み」「オンライン送信したから提出完了」とは限らないため、現在の手続が何かを担当窓口へ確認してください。
警察相談・情報提供・通報・被害届は目的が違う

暮らしの相談所|独自制作イラスト
警察相談は、不安や被害状況を伝え、適切な窓口や対処を確認する入口です。情報提供は、犯罪の端緒となる情報を警察へ知らせる役割があります。警察庁のサイバー窓口では、通報、相談、情報提供の区分が示されていますが、オンライン受付の利用方法と、書面としての被害届の提出は同一ではありません。
被害届を希望する場合は、「相談したい」だけで終えず、「被害届の提出を希望している。どの資料を準備し、どの窓口へ行けばよいか」と明確に伝えます。担当部署、来署日時、持参物、データの提出形式を聞き、案内内容を記録します。被害届、告訴、相談は法的な意味や手続が異なるため、自己判断で同じものとして扱いません。
受理の判断に関わりやすい事実を先に整理する

警察庁公式のサイバー事案オンライン受付窓口。2026年10月6日取得。
被害がいつ発生したか、被害者がどこにいたか、どの取引所口座から送ったか、相手との連絡手段、サイトの運営表示、金銭や暗号資産を交付した理由、相手の説明がどこで虚偽だと疑われるかを整理します。単なる投資損失なのか、説明と異なる送金誘導や出金妨害があったのかを区別します。
相手が海外にいる、運営会社が不明、サイトが閉鎖されたという事情があっても、推測で所在地や犯人を決めません。確認できるURL、ドメイン、電話番号、口座名義、ウォレットアドレスを示し、不明点は不明と記載します。相手の国籍や属性も、画面表示と確認済み事実を分けます。
提出前に作る「被害の一枚要約」
要約の上段に、被害者名、連絡先、発生期間、接触経路、相手の表示名、サイト名とURLを書きます。中央に送金を一行ずつ並べ、日時、通貨、数量、円換算、送信元取引所、ネットワーク、送金先、TXIDを記載します。下段に出金申請日、拒否理由、追加請求、現在の連絡状況をまとめます。
要約は証拠そのものを置き換えるものではありません。各行の右端へ「証拠3」「会話12」のような参照番号を付け、原資料へたどれるようにします。感情や評価は別欄にし、事実の時系列が一目で見える形を優先します。合計額を出す場合は送金時点の円換算と現在価格を混同しないでください。
暗号資産特有の資料は文字列と画面の両方を残す

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TXIDやウォレットアドレスは一文字違うだけで別の情報になります。スクリーンショットに加えて、取引所からダウンロードした履歴、確認メール、CSV、コピーした文字列を保存します。ネットワーク名、タグやメモの有無、送信手数料も確認してください。
ブロックチェーンエクスプローラーの表示は、取引が記録されたことを示しても、相手の身元や詐欺の成立を単独で証明するものではありません。サイト内残高とオンチェーンの移動を区別し、どこまで確認できたかを説明します。画面上の「利益」には対応するTXIDがないこともあるため、入金と出金を別に記録します。
会話履歴は途中を抜かず、アカウント情報と結び付ける

警視庁公式の暗号資産投資詐欺ページにある相談窓口。2026年10月6日取得。
利益保証、送金指示、出金条件、税金や保証金の要求だけを切り抜くと、前後関係が分かりにくくなる場合があります。重要場面は前後数メッセージを含め、日付と時刻が見える形で保存します。音声通話の内容は、通話日時、相手番号、話した要点を直後にメモします。
SNSのプロフィールと会話画面が別の場合は、同じアカウントだと分かるユーザーIDを記録します。相手が送信を取り消す前にエクスポート機能や画面収録を利用し、元端末を初期化しないでください。翻訳を付ける場合も、原文を残して対訳にします。
受理されなかった・追加資料を求められたときの確認点
その場で受理に至らない場合、理由を感情的に推測せず、どの事実や資料が不足しているのか、管轄はどこか、別部署や別窓口への相談が必要かを確認します。案内された日時、部署、担当者、追加資料をメモし、再提出の方法を聞きます。
法的な評価に疑問がある場合は、弁護士など適切な専門家への相談も選択肢です。ただし、「被害届を必ず受理させる」「警察と特別な関係がある」とうたって高額費用や暗号資産を先払いさせる業者には注意してください。公的機関から紹介されたと装う業者も、公式番号から確認します。
提出後も取引所・端末・アカウントの保全を続ける

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被害届を提出した後も、相手との会話やサイトが消える可能性があります。パスワード変更、二要素認証、APIキーやウォレット承認の確認を行い、保存した証拠のバックアップを維持します。相手を刺激して証拠が消えないよう、連絡の続け方は担当者へ確認します。
取引所から照会が来た場合に備え、登録メールを受信できる状態にし、迷惑メールも確認します。新しい送金要求には応じず、捜査機関や取引所を名乗る連絡も公式番号から真偽を確認します。提出したコピーと同じ一式を自分用にも保管します。
相談記録と被害届を混同しないための質問
窓口では「今日の手続は相談受付か、被害届の提出か」「受付内容を確認する方法はあるか」「追加資料はどこへ、いつまでに出すか」「管轄が変わる場合の連絡先はどこか」を聞きます。書類の名称や番号は警察ごと・手続ごとに異なる可能性があるため、一般的な呼び方を押し付けません。
自分の目的も整理します。緊急停止、被害事実の申告、相手情報の提供、今後の安全確保は、それぞれ必要な窓口が異なる場合があります。被害届だけを唯一の目標にすると、取引所への連絡や端末保全が遅れるため、並行して進めます。
被害額・関係者・管轄を分ける
提出を考える段階では、被害額の計算根拠を明確にします。暗号資産の数量、取得に使った日本円、送信時の評価額、サイト上の架空利益らしき表示を別々にします。サイトに表示された利益をそのまま被害額へ足すのではなく、実際に交付した資産を中心に整理し、評価方法は担当者へ確認します。
複数の家族や知人が同じ相手へ送金している場合も、各人の口座、勧誘、送金、被害を混ぜません。共通のグループチャットや送金先があることは関連情報として示しつつ、誰が何を経験したかを一人ずつ記録します。
管轄について自分で断定する必要はありません。居住地、送信操作をした場所、送信元取引所、相手サイト、銀行振込先など関係地点を伝え、どの警察署や部署へ相談すべきか案内を受けます。別の窓口を案内された場合は、同じ説明を繰り返せるよう一式を持ち運びます。
提出書面と連絡経路を確認する
書面へ署名する前に、記載内容が自分の説明と合っているかを落ち着いて確認します。固有名詞、日時、数量、アドレス、ネットワークは特に誤りやすい部分です。分からない項目を推測で確定せず、訂正や補足の方法を担当者へ聞きます。
提出後の連絡を装う二次被害にも備えます。警察官や取引所職員を名乗り、暗号資産を安全口座へ移すよう指示したり、秘密鍵を聞いたりする連絡には応じません。担当部署の正式な電話番号と連絡方法を控え、受信した番号とは別に公式情報から確認します。
被害届の提出を希望する理由を「返金してほしい」だけにせず、どの説明を信じて資産を交付し、どの時点で説明と現実が食い違ったか示します。民事上の契約問題と犯罪被害の可能性が重なることもあるため、自分で一方に決めつけません。
メール・規約・第三者情報を保全する
メールのヘッダー、送金確認メール、ログイン通知、端末のアクセス履歴が残っている場合は保全します。本文だけを転記せず、送信元や受信日時が分かる形式を残します。不審な添付ファイルは開かず、存在とファイル名を記録します。
サイトの会社概要や利用規約を保存するときは、取得日時とURLを入れます。規約が後から変更された可能性に備え、PDF保存と画面画像の両方を残します。別言語の規約しかない場合、原文と自分用の翻訳を分けます。
警察へ提出する資料に他人の個人情報が含まれる場合、自分の判断で消去する前に取扱いを相談します。グループチャットの参加者名、紹介者の連絡先、送金先名義などは、事件関係を確認する手掛かりになる可能性があります。
体験談ではなく個別案内を確認する
被害届の扱いについてインターネット上の体験談をそのまま自分に当てはめないでください。地域、管轄、被害内容、証拠、時期が異なります。公式窓口へ具体的な事実を示し、自分の案件に必要な手順を確認します。
提出資料の一覧表には作成日を付け、後から追加した資料が分かるよう版を分けます。
参考情報・免責
本記事は警察庁「サイバー事案に関する相談窓口」、警視庁「暗号資産(仮想通貨)の投資詐欺に注意!」、e-Gov法令検索の刑事訴訟法を確認し、提出前の準備を暮らしの相談所が独自に整理したものです。被害届の受理、犯罪の成立、捜査開始、犯人特定、返金を保証しません。刑事訴訟法の告訴・告発に関する規定と被害届を同一視せず、具体的な手続は警察または法律専門家へ確認してください。
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