利益は出ているのに、出金だけができない。

そして今、何をすればいいのか分からない。誰の言うことを信じていいのかも分からない。——もしそういう状態でしたら、その警戒は正しいです。騙された直後に人を信じられなくなるのは、防御として正常な反応です。

なので、この記事は売り込みのために書いていません。読み終えた時点で「今日やること」と「どこへ行けばいいか」が分かるように書いています。そして、読んでも決められなかったときは、そのままの状態で来てください。何から話せばいいか分からない、で構いません。一緒に整理します。

内容も、こちらを信用していただく必要がない形にしてあります。金融庁の一覧をご自身で確認する手順、警察や消費生活センターの窓口——ご自身の目で確かめられるものだけを書きました。

先にひとつだけお伝えします。「出金するには先に税金(手数料・保証金)を払ってください」と言われている場合は、その支払いをいったん止めてください。日本の税金は確定申告でご自身が納めるもので、取引所が出金の条件として先に徴収する仕組みはありません。理由は「「税金を払えば出金できる」は、なぜ嘘だと言い切れるのか」の章で説明します。

この記事の歩き方

やることは3つだけです。順番も決まっています。

  • 1. 止める — これ以上、送らない・払わない
  • 2. 残す — やりとりと送金の記録を保存する(30分ほど)
  • 3. 持っていく — 記録を持って、適切な窓口へ行く

この記事は、この3つを順番に説明しています。急いでいる方は「今日やること ― 最初の72時間」の章まで飛ばしてください。「自分のケースは本当に詐欺なのか」を先に確かめたい方は、次の章からお読みください。

まず落ち着いて。出金できない=詐欺、とは限りません

出金できない状態には、詐欺以外の理由もあります。先にそちらを潰しておきます。ここで解決するのであれば、それがいちばんよい結末です。

取引所側の事情で止まっている場合

  • システムメンテナンス。定期・臨時ともにあり、その間は出金申請自体が受け付けられません
  • ブロックチェーンの混雑。申請は通っているが、ネットワーク側で処理待ちになっている状態です
  • 出金上限。1日あたり・1回あたりの上限や、本人確認の段階に応じた上限が設定されています
  • 本人確認(KYC)の再審査。登録情報の有効期限切れや、住所・書類の不備で一時的に止まることがあります
  • トラベルルールへの対応。日本では、暗号資産を他の事業者へ送る際に送付人・受取人の情報を通知する仕組みがあり、送金先の取引所が対応していない場合、その宛先へは送れません
  • 不正ログインの検知による一時凍結。普段と違う端末や地域からのアクセスで、安全側に止まることがあります

ご自身の設定・手続きで止まっている場合

  • 出金先アドレスの登録直後。新しい送金先を登録してから一定時間は出金できない設定の取引所があります(不正送金を防ぐための仕組みです)
  • 二段階認証の再設定直後。同様に、一定期間の出金制限がかかることがあります
  • 最低出金額に届いていない
  • ネットワークの選択違い。同じ銘柄でも複数のネットワークがあり、宛先と一致していないと弾かれます
  • 初回出金の待機期間や、税務情報・追加書類の未提出

ここまでを確認する手順

  • 取引所の公式サイトのお知らせページを見る。メンテナンスや出金停止は、公式のお知らせで告知されるのが通常です
  • アプリ・管理画面の出金申請のステータスを見る。「審査中」「処理中」「却下」のどれなのかで原因が絞れます
  • 解決しなければ、取引所の公式の問い合わせ窓口から問い合わせる

ここで原因が判明し、手続きで解決するのであれば、詐欺ではありません。

そのうえで、判断の分かれ目になる一点をお伝えします。正規の取引所であれば、出金できない理由は、公式の画面やお知らせ、公式サポートから案内されるのが通常です。担当者と名乗る個人から、LINEやTelegramで理由を説明されている——その状態そのものが、次の章で説明するサインのひとつです。

詐欺のときに繰り返し現れるサイン

ここからは、詐欺として報告されている事例に共通して現れる特徴を挙げます。ひとつ当てはまったからといって断定はできません。ただ、複数が重なっている場合は、追加の支払いをする前に立ち止まってください。

1. 出金しようとしたら「税金」「保証金」「手数料」を先に払えと言われた

これがもっとも分かりやすいサインです。正規の取引所は、出金の条件として別途の入金を求めません。手数料がかかる場合も、出金する金額から差し引かれるのが通常です。「別のお金を用意して振り込んでください」という形になった時点で、通常の取引とは違う手続きです。

この一点については、次の章で制度の面から詳しく説明します。

2. 一度払ったのに、今度は別の名目でもう一度請求された

税金を払ったら保証金、保証金を払ったら凍結解除料、次はマネーロンダリング審査費用、その次は弁護士費用——という形で名目が変わり続けるケースが報告されています。

名目が変わり続けること自体が答えです。本当に手続き上必要な費用であれば、最初に総額が提示されます。あとから増えていく構造は、払える限り払わせるための設計です。

3. 担当者とのやりとりが、個人のLINEやTelegramだけになっている

正規の取引所が、個人アカウントのLINEやTelegramで顧客対応をすることはありません。サポートは公式サイトの問い合わせフォーム、または公式アプリ内で完結します。

「担当者」「アナリスト」「サポート責任者」といった肩書きの人物が個別にやりとりを持ちかけてくる形は、SNSや出会い系アプリからの誘導で繰り返し確認されている流れです。

4. サイトの日本語が少し不自然/会社情報が薄い、または存在しない

会社概要のページを開いて、次の点を確認してください。

  • 運営会社名・所在地・代表者名が書かれているか
  • その住所を地図で検索して、実在する建物か
  • 他社の登録番号や、無関係な企業の住所が流用されていないか
  • 利用規約やプライバシーポリシーが、他サイトからの流用のような不自然な文面になっていないか

日本語の不自然さは、単独では根拠になりません。ただし会社情報が確認できないことと組み合わさると、意味を持ちます。

5. 金融庁の登録業者一覧に載っていない

これはご自身で、今すぐ確認できます。こちらを信用していただく必要がない、いちばん確実な方法です。

日本に住んでいる方に対して暗号資産の交換業を行うには、登録が必要です。一覧に名前がないということは、日本の制度の外にある相手だということです。その場合、後から行政に助けを求めても、手が届く範囲が大きく狭まります。

なお「海外の登録を持っている」「別の国のライセンス番号がある」と説明されることがあります。番号が実在するかどうかは、その国の当局のサイトで照合できます。他社の番号をそのまま表示している例も報告されています。

6. 画面上の利益は増え続けているのに、一度も出金できていない

資産画面に表示されている数字は、その業者が自分で書いているものです。ブロックチェーン上の残高とは限りません。実際に手元へ引き出せたかどうかだけが、確認できる事実です。

「最初の少額だけは本当に出金できた」というケースもあります。これは信用させるために用意された段階として報告されているもので、出金できた実績があること自体は安全の証明になりません。

7. 「あと少しで出金できる」と言われ続けている

期限が近づくたびに新しい条件が現れ、そのたびに「これが最後です」と言われる。この繰り返しが続いている場合、条件を満たしても次の条件が出てくる可能性を考えてください。

確認の方法はひとつです。追加の支払いをせずに、出金だけを申請してみる。それができない理由が、公式の画面ではなく担当者の口頭でしか説明されないのであれば、答えは出ています。

いくつ当てはまったら、と考えなくて大丈夫です

数を数える必要はありません。「追加の支払いを求められている」に当てはまっている時点で、その支払いは止めてください。止めても失われるものはありません。止めずに払った場合にだけ、失うものがあります。

「税金を払えば出金できる」は、なぜ嘘だと言い切れるのか

この章だけは、断定して書きます。制度の話だからです。

日本の税金は、取引所に前払いする仕組みではありません

暗号資産の取引で得た利益は、原則として雑所得にあたり、確定申告によってご自身が税務署に納めます。取引所が出金の条件として税金を預かり、納税を代行するという制度は存在しません。

ここが決定的なところです。仮に何らかの源泉徴収があったとしても、それは受け取る金額から差し引かれる形になります。税金を理由に、別途お金を用意して事業者へ先に振り込ませる仕組みはありません。

つまり「出金したいなら、まず税金分を入金してください」という案内は、日本の税制のどの仕組みとも一致しません。相手が海外の事業者を名乗っている場合も同じです。日本に住む方の暗号資産の所得を、海外の事業者が日本の税として徴収する制度はありません。

保証金・凍結解除料・審査費用も、同じ形をしています

名目はさまざまですが、構造はすべて同じです。「出金という目的を達成するために、先に別のお金を入れる」——この形になっているかどうかだけを見てください。

報告されている例では、次のような順で請求が続いています。

  • 税金・所得税・利益に対する手数料
  • 保証金・証拠金・担保金
  • 口座凍結の解除料
  • マネーロンダリング審査費用、国際送金手数料
  • 弁護士費用、認証費用

途中で「これが最後です」と言われます。その言葉のあとにも、次が来ています。

振込先が個人名義になっていたら

請求された金額の振込先が個人名義の口座、あるいは指定されたウォレットアドレスへの暗号資産での送金になっている場合、正規の事業者の会計処理としては説明のつかない形です。ここも、ご自身で確認できる客観的な点です。

すでに払ってしまった方へ

この章を読んで、自分を責めている方がいらっしゃると思います。

先に申し上げます。払ってしまうのは、おかしなことではありません。この手口は、すでに大きな金額を預けている人ほど「ここでやめたら全部無駄になる」と感じるように組み立てられています。冷静さを失ったから払ったのではなく、冷静に考えても払うのが合理的に見えるよう、設計されているのです。

そして、何度か払ってしまった方でも、今日できることは変わりません。次の一回を止めることです。過去の支払いは取り消せませんが、これから先は止められます。そこに遅すぎるということはありません。

この手口をさらに詳しく整理した記事もあります。

なお、この記事では特定の事業者名を挙げて「詐欺である」と断定することはしていません。書いているのは、制度としてそうなっているという事実と、報告されている手口の形です。

今日やること ― 最初の72時間

ここからは手順です。上から順に進めてください。所要時間は30分から1時間ほど。今日のうちに終わります。

順番には理由があります。飛ばさずにお読みください。

01 止める

これ以上、送らない。払わない。

「あと一回だけ払えば出金できる」と言われている最中かもしれません。ここで止まるのは、正直かなり難しいと思います。すでに大きな金額を入れているほど、「ここでやめたら全部無駄になる」という気持ちが働きます。

ただ、報告されている手口には共通の形があります。一度払うと、別の名目で次の請求が来る例が繰り返し報告されています。名目が変わり続けること自体が、答えです。

すでに何度か払ってしまった方へ。ここでやめても、遅すぎるということはありません。次の一回を止めることが、今日いちばん確実にできることです。

02 残す

ここがあとで効いてきます。そして、いちばん見落とされるところです。

スクリーンショットで保存するもの

  • 相手とのやりとり全部(LINE/Telegram/メール/サイト内チャット)。一部ではなく、最初から最後まで
  • 取引画面(残高/取引履歴/出金申請画面/エラー表示)
  • サイトのURLがアドレスバーに写っている状態の画面
  • 相手の名前・アカウント名・アイコンが分かる画面
  • 振込明細・送金完了画面

文字で控えるもの

  • 送金先の銀行口座番号・名義
  • 暗号資産なら、送金先ウォレットアドレス/TXID(取引ID)/ネットワーク名/銘柄と数量
  • 送金した日時(できるだけ正確に)
  • サイトの正確なURL

TXIDは聞き慣れない言葉かもしれませんが、暗号資産の送金一件ごとに付く長い英数字の番号です。取引所の履歴画面から確認できます。追跡の起点になるので、これだけは必ず控えておいてください。

スクリーンショットは端末の中だけでなく、クラウドかメールでご自身宛に送っておくと安心です。端末の故障や紛失で全部消えてしまった、という話が実際にあります。

03 ブロックするのは、いちばん最後

ここだけ独立して書きます。実務でいちばん効くのに、いちばん見落とされることだからです。

怖くなって、あるいは腹が立って、すぐにブロックや削除をしてしまう方がいます。気持ちとしては自然です。でも、やりとりを保存する前にブロックすると、証拠が一緒に消えることがあります。

順番はこうです。全部保存してから、ブロックする。グループチャットから抜ける場合も同じで、抜けた瞬間に過去ログが見られなくなる形式があります。

ただし、相手から脅されている・身の危険を感じている場合は、この順番より安全が優先です。先に連絡を断って構いません。その場合は、そのことも含めて警察にお伝えください。

04 銀行振込で送った場合は、すぐ銀行へ

ここだけは時間勝負です。

振り込め詐欺救済法という制度があり、詐欺に使われた口座は凍結できる場合があります。凍結が間に合えば、口座に残っている分から被害回復分配金が支払われる可能性があります。

連絡先は、ご自身が振り込んだ側の銀行です。「詐欺被害に遭ったので口座凍結の相談をしたい」と伝え、振込日時・金額・振込先の口座番号と名義を伝えます。

お金が引き出されてしまえば、この制度では戻りません。だから早いほうがいいです。

05 警察に相談する

最寄りの警察署、または各都道府県警のサイバー犯罪相談窓口へ。記録を印刷するか、端末で見せられる状態にして持っていきます。

相談だけなら、警察相談専用電話 #9110 も使えます。

「民事不介入だから動いてくれない」と聞くことがありますが、詐欺は刑事事件です。窓口で話が通りにくいと感じた場合は、サイバー犯罪相談窓口のほうが扱いに慣れていることがあります。記録を持っていくかどうかで、対応が変わります。

やり終えたら

ここまでできていれば、今日やるべきことは終わりです。

このあと「どこに相談するか」を決める段階になりますが、それは明日でも構いません。止めて、残しておけば、選択肢は残ります。

どこに相談すればいいのか

ここが、いちばん迷うところだと思います。

窓口はいくつもあって、それぞれできることが違います。そして正直に言うと、どこか一つに行けば全部解決する、という窓口はありません。だから「自分のケースはどこか」を選ぶ必要があります。

以下、それぞれ「できること」と「できないこと」を並べます。できないことのほうを、きちんと書きます。期待の方向を間違えると、二度手間になるからです。

警察

できること

被害届の受理、捜査。銀行口座の凍結につながる場合がある

できないこと

あなたの代わりに返金交渉をすること。返金の保証

向いている人

銀行振込で送金した方。送金から日が浅い方

窓口

最寄りの警察署、または各都道府県警のサイバー犯罪相談窓口
相談だけなら警察相談専用電話 #9110

「民事不介入だから動いてくれない」と聞くことがありますが、詐欺は刑事事件です。断られたと感じた場合は、サイバー犯罪相談窓口のほうが話が通りやすいことがあります。記録を持っていくと、扱いが変わります。

消費生活センター

できること

助言、事業者との間に入っての「あっせん」

できないこと

海外事業者への強制力。暗号資産の投資トラブルは範囲外とされることがある

向いている人

まず誰かに状況を整理して聞いてほしい方

窓口

消費者ホットライン 188(いやや)

「暗号資産の投資は管轄外です」と案内されることがあります。たらい回しにされたように感じるかもしれませんが、担当が違うだけで、その場合は次の窓口を教えてもらえます。

金融庁(金融サービス利用者相談室)

できること

無登録業者の情報を受け付ける。制度についての一般的な説明

できないこと

個別のトラブル解決、返金、仲裁

向いている人

その業者が登録を受けているか確かめたい方

ここは「助けてもらう窓口」ではなく「確かめる窓口」です。個別の被害回復は扱っていません。登録の有無は、金融庁のサイトの「暗号資産交換業者登録一覧」でご自身でも確認できます。

弁護士

できること

相手方との交渉、訴訟、発信者情報開示請求、返金請求

できないこと

回収の保証。相手が特定できない場合の強制

向いている人

送金先が国内で、相手がある程度特定できている方

費用

相談料・着手金・成功報酬。事前に総額を確認してください

回収可能性が低い案件は、受任されないことがあります。断られてもおかしいことではありません。なお法テラスは、収入等の条件を満たす方向けの制度です。

調査会社(追跡調査)

できること

暗号資産の送金先の追跡、報告書の作成

できないこと

法的な交渉・回収(弁護士でない者が報酬を得て行うことはできない領域です)

向いている人

暗号資産で送金していて、追跡結果を弁護士や警察に持ち込みたい方

費用

会社により大きく異なります。契約前に必ず総額と、成果が出なかった場合の扱いを確認してください

ここはもっとも慎重に選んでいただきたいところです。次の章の「二次被害」もあわせてお読みください。

当相談所

できること

仮想通貨に精通したエンジニアによる専門相談
状況の整理(何が起きたのか、今どの段階なのか)
ボランティアのため、完全に無料です

できないこと

法的手続き
仮想通貨以外のご相談

ここまで読んで、それでもどこへ行けばいいか決められなかった方。

決められなくて当然だと思います。窓口ごとに役割が違いますし、そもそも今は、考えをまとめること自体がつらい時期のはずです。

そういうときのために、私たちがいます。

まず状況を伺って、何が起きたのかを一緒に整理します。そのうえで、あなたのケースならどこへ、どの順番で進むのがいいかを、一緒に考えます。その先の手続きが必要になったときも、ひとりで放り出したりはしません。

暗号資産の送金は、専門の知識がないと「何が起きたのか」を掴むこと自体が難しい分野です。当相談所には仮想通貨に精通したエンジニアがいるので、技術的なところも含めて、分かる言葉でお話しします。

費用はかかりません。有志のボランティアで運営しているので、お金をいただく仕組みがありません。

各窓口の使い分けについては、仮想通貨詐欺の相談先まとめでも整理しています。

お金は戻ってくるのか ― 正直なところ

いちばん知りたいところだと思います。そして、いちばん正直に書かなければいけないところだと思っています。

当相談所はボランティアで運営していて、調査も返金交渉も販売していません。「取り戻せます」と言ったところで、こちらに得がありません。だからそのまま書きます。

戻る可能性が比較的あるケース

  • 国内の銀行口座へ振り込んだ場合。振り込め詐欺救済法による口座凍結と、被害回復分配金の対象になり得ます
  • 送金から日が浅い場合。凍結が間に合うかどうかが分かれ目です
  • 相手の口座に、まだ残高が残っている場合。引き出されたあとでは、この制度では戻りません

この条件に当てはまる方は、この記事の続きよりも、先に銀行へ連絡してください。時間が最大の要素です。

難しいケース

  • 暗号資産で、海外のウォレットへ送金した場合
  • 送金から時間が経っている場合
  • 資金が複数のウォレットを経由して分散された場合

難しいと書いたのは、可能性がゼロだという意味ではありません。ただ、道のりが長く、費用がかかり、それでも戻らないことがある、という意味です。ここを曖昧にしたまま費用のかかる契約に進むと、傷が二つになります。

追跡調査でできること、できないこと

ブロックチェーンは公開された台帳なので、送金がどこへ流れたかは、原理的には誰にでも追えます。これは事実です。

そのうえで、追跡の結果がどこに着地するかで意味が変わります。

  • 資金が取引所のウォレットに入った場合。その取引所は本人確認情報を持っているため、捜査機関や法的手続きを通じて先に進める道があります
  • 資金が個人のウォレットに留まっている場合。持ち主が誰かは、ブロックチェーンだけでは分かりません

つまり追跡そのものは返金ではありません。追跡は、警察や弁護士に持ち込むための材料をつくる作業です。ここを「追跡すれば戻る」と説明されたら、説明が足りていません。

仕組みと限界については、仮想通貨の送金は追跡できるのかで詳しく説明しています。返金の可否については仮想通貨詐欺の返金は可能かもあわせてご覧ください。

「必ず取り戻せます」と近づいてくる相手にご注意ください

ここは、この記事でいちばん実用的な警告かもしれません。

一度被害に遭った方の連絡先が名簿として出回り、回復をうたう別の相手から接触があるケースが報告されています。いわゆる二次被害です。

次のいずれかに当てはまる相手には、お金を払う前に一度止まってください。

  • 向こうから連絡してくる。SNSのDM、被害相談の投稿へのコメント、電話、メール
  • 成功を保証する。「必ず」「100%」「取り戻せなければ全額返金」
  • 総額を先に言わない。着手金だけ示し、その後の費用が示されない
  • 連絡手段がLINEやTelegramだけ。事務所の所在地や固定電話が確認できない
  • 海外の弁護士、政府機関の職員、ハッカーなどを名乗る

判断に迷ったら、その相手の名称で「暗号資産交換業者登録一覧」や日本弁護士連合会の会員検索を確認してください。弁護士を名乗るのであれば、氏名と所属弁護士会を日本弁護士連合会の弁護士検索で確かめられます。

関連する記事はこちらです。

よくある質問

出金できないだけで、詐欺と決めつけていいのでしょうか

いいえ、決めつけないでください。この記事の前半で挙げたように、取引所側の事情やご自身の設定で止まっていることもあります。まずはそちらを確認してください。判断の分かれ目は「追加の支払いを求められているかどうか」です。求められていないのであれば、詐欺以外の可能性が十分にあります。

出金できないまま放置したら、どうなりますか

状況が良くなることは、まずありません。銀行振込の場合は口座凍結が間に合わなくなり、暗号資産の場合は資金がさらに分散されます。また、放置している間も「あと少しで出金できる」という連絡が続き、追加の請求につながることがあります。

今日できるのは「止める」と「残す」の2つだけです。この2つをやっておけば、相談する気持ちになったときに選択肢が残ります。

少額だけ出金できたのに、その後できなくなりました

最初の少額の出金は、信用を得るために用意された段階として報告されている形です。「一度出金できた」という事実が、そのあとの大きな入金をためらわせないために働きます。出金できた実績があること自体は、安全の証明にはなりません。

家族に知られずに相談できますか

できます。当相談所へのご相談は、LINEの表示名のままで構いません。本名やご住所をお聞きすることはありませんし、こちらから営業のご連絡をすることもありません。既読だけで終わっていただいても大丈夫です。

そのうえで、ひとつだけ申し添えます。警察への被害届や銀行での手続きの段階になると、ご家族に伝わる可能性は出てきます。そのときにどうするかも含めて、一緒に考えられます。

もう1年以上経っていますが、今からでも相談していいですか

はい。時間が経っているほど回復は難しくなりますが、相談する意味がなくなるわけではありません。同じ業者について複数の報告が集まることで、注意喚起につながることもあります。また、時間が経ってから「返金できます」という連絡が来ている場合は、そちらのほうが急ぎの用件です。

最後に

ここまで読んでも、気持ちが決まらないかもしれません。それで構いません。

ただ、「止める」と「残す」の2つだけは、今日のうちにやっておいてください。あとから相談する気になったとき、記録が残っているかどうかで、できることが変わります。

そして、どこへ行けばいいか決められなかったときは、決められないままで構いませんので、こちらへお声がけください。何から話せばいいか分からない、で大丈夫です。一緒に整理するところから始めます。